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症状改善が見られない中で、日常の小さな変化に気づく:患者さんが見つけた体と心のサイン

Tags: 症状管理, 自己観察, ピアサポート, 心のケア, 日常の工夫

治療を続けても症状の改善が見られない時、患者さんの多くは「このままで良いのだろうか」「何か見落としていることがあるのではないか」といった不安を感じることがあるかもしれません。大きな改善が感じられない状況では、時に希望を見失いそうになることもあるものです。

しかし、他の患者さんの中には、劇的な変化ばかりを追うのではなく、日常のわずかな体や心のサインに意識的に目を向け、それを自身の状態理解や今後の対処に活かしている方がいらっしゃいます。この記事では、そうした患者さんたちがどのような工夫をして、どのように小さなサインに気づき、それを自身のケアに役立てているのか、具体的な経験談をご紹介します。

「見えない改善」の中の小さな体調の変化

症状が全く変わらないと感じる時でも、私たちの体は実は様々なサインを送っていることがあります。それに気づくことが、病状と向き合う上で大切な一歩となる場合があります。

例えば、ある患者さん(仮にAさんとします)は、日々の体調変化を詳細に記録する習慣を始めました。食事の内容、睡眠時間、気分、活動量、そして症状の程度などを毎日書き留めることで、それまで漠然と感じていた特定の行動と体調の関連性を発見したそうです。

「以前はただ『今日は調子が悪い』で終わっていたのですが、記録を続けるうち、『特定の食品を摂った翌日は体が重く感じやすい』とか、『いつもより30分長く眠れた日は、午前中の倦怠感が少し和らぐことがある』といった、ごく小さなパターンが見えてきました。これは劇的な改善ではありませんが、自身の体を理解する上での大切な手がかりになりました」とAさんは話しています。

また別の患者さん(Bさん)は、無理のない範囲での軽いストレッチやウォーキングを日課にすることで、体の微細な変化に気づくきっかけを得たそうです。

「症状が重い日は無理をしませんが、少しでも体が動かせそうな時は、ほんの5分でも体を動かすようにしています。すると、日によって体のこわばり方が違うことや、特定の部位の凝りが少し軽減している日に気づくことがあります。こうした小さな変化でも、『今日はいつもより少しだけ楽に動けた』と感じることは、心の支えになります」とBさんは語っています。

心の動きに耳を傾ける

症状が長引く状況では、体だけでなく心もまた様々な影響を受けます。精神的な波に気づき、それに適切に対処することは、心の負担を和らげることにつながります。

患者さんの中には、自身の感情の動きに注目した方もいらっしゃいます。例えばCさんは、ネガティブな感情が湧いた時、その状況や感情の強さ、そしてその時に考えていたことをメモに残すことを試みました。

「『なぜこんなにイライラするのだろう』と感じた時、それをただやり過ごすのではなく、メモに残すようにしました。すると、『特定のニュースを見た後だった』とか、『体調が特に悪い日に、期待していたことが叶わなかった時だった』といった、感情が動く特定のトリガーやパターンに気づくことができました。これにより、事前に心の準備をしたり、時には無理をしない選択をするといったヒントを得ることができました」とCさんはその経験を話しています。

また、ある患者さん(Dさん)は、定期的に心理カウンセリングを利用することで、自身の心の変化に気づくことができたと言います。

「症状がなかなか改善しないことで、自分を責めてしまうことが多かったのですが、カウンセラーの方と話す中で、自身の考え方の癖や、症状に対する向き合い方が少しずつ変化していることに気づきました。劇的に気分が良くなるわけではありませんが、自分の感情を客観的に見つめ、言語化できるようになることで、精神的な負担が少しずつ和らぎ、心の余裕が生まれることを経験しました」とDさんは語っています。

小さなサインを活かすための工夫

これらの小さなサインに気づいた後、それをどのように自身のケアに活用していけば良いのでしょうか。

Eさんは、自身の体調記録を医師に伝えることを実践していました。

「『今日はいつもより倦怠感が強かったのですが、記録を見返すと、昨晩の睡眠時間が短かったことに気づきました』といった具体的な情報や、自分で気づいた小さな変化を医師に伝えるようにしています。すると、治療方針の調整や、生活面でのより踏み込んだアドバイスを得るきっかけになることがありました」とEさんは話します。

また、Fさんのようにピアサポートの場を活用する人もいます。

「自分一人で抱え込んでいると、どんな小さな気づきも『こんなこと言っても仕方ないかな』と思ってしまいがちです。しかし、同じような経験を持つ方々と自身の気づきを共有することで、『私もそういうことあります!』といった共感を得られたり、『その気づき、私も試してみようかな』と新たな視点や対処法を知る機会になったりすることがあります。話すことで、自分の気づきが肯定される経験はとても心強いものです」とFさんは語っています。

おわりに

症状改善が見られない期間は、辛く、時には孤独を感じるものですが、他の患者さんの経験からは、日常の小さな変化に意識を向けることの大切さが伝わってきます。それは劇的な改善ではないかもしれませんが、自分自身の体と心をより深く理解し、病気と向き合う上での大切な一歩となるかもしれません。

一人で抱え込まず、ここでご紹介した様々な工夫や視点も参考にしながら、ご自身のペースで、今日という日を少しでも心穏やかに過ごすためのヒントを見つけていただければ幸いです。